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プレ・ラーリオス

太陽の失墜(7)


 
7.星輝転装
 《神子の間》の大扉は閉ざされていた。
 
外部から、神子覚醒の儀式を妨害されないように、術による封印が施されているのだ。
 二、三度、体当たりをしても開きそうにないのを悟って、リメルガは一瞬、うめき声をあげた。
「ぼくも協力します。もう一度、当たりましょう!」
 自分では建設的なことを言っているつもりの若僧を無視する。
(おまえみたいな軟弱な坊やが一人加わっただけで、この頑丈な扉が開くか! 少しは状況を考えて喋りやがれ!)という思いは、いちいち口に出さずに内心で処理する。それが大人の流儀だ。
 こわもての番兵は腹部に手をやった。そこに力の源である星輝石を感じると、ムンッと念をこめて力を引き出す。
 すると、リメルガの全身が淡く発光し、鍛えられた筋肉がさらに膨れ上がる。身につけた黒基調の衣服ははじけ飛ぶ――ように見えて、実際は光の粒子と化して、星輝石内部に保存される……らしいのだが、そんな小難しい理屈は、リメルガにはどうでもいい。
 巨漢の肉体がさらに大きくなり、全身に焦げ茶の剛毛が生えてくる。
 その姿は、原始的な類人猿を思わせたが、頭部や拳や胸部、腹部、脚部の要所要所に生体と融合したかのような鎧が生成されていた。上位の星輝士が甲冑然とした金属質の装甲を身に着けるのに対し、一般の星輝士はより生物らしい装いとなる。中世の騎士に対して、なめし皮(レザー)や毛皮の鎧を身につけた蛮族のような雰囲気だ。
 その姿がリメルガにとっては、お気に入りだ。上位の連中は、いかにも見てくれが派手派手しくて、性に合わねえ。強さの本質は、シンプル・イズ・ベスト。無駄な装飾は、動きの邪魔になるだけだ。
 おまけに、上位の連中の操る《気》の力なんてものは、リメルガにとっては、単に、しち面倒くさいだけだった。術だか、魔法だかしらねえが、そんな小細工に頼らなくても、目の前の敵を拳で粉砕できれば、それで勝負は勝ちだ。頼るとしても、せいぜい力の象徴たる銃器。
 大扉の向こうからは、先ほどまではなかった戦場特有の緊迫感が、伝わってきた。中で何が起こっているかは分からないが、入れば戦闘になることだけは間違いない。
 リメルガは、相棒の若僧に目をやった。
「え?」まだ転装もしていない小僧に呆れつつ、黙って、腹部を指差してやる。
「あ、そうですね。よし、星輝転装(せいきてんそう)!」
 いちいち言葉を発して、両腕を振り回す独特のポーズを決めると、若僧は肉食獣の姿に変わった。本人は狼と主張していたが、リメルガにとっては、腑抜(ふぬ)けた子犬も同然の姿だ。
 そう言えば、東の島国に「犬猿の仲」という言葉があったかな?
 珍しく薀蓄(うんちく)を頭に思い浮かべると、リメルガは納得した。
 道理で、このガキとうまく合わないわけだぜ。


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●作者NOVAの余談

 リメルガ視点の章。
 大扉の前で、星輝転装(変身)するだけの内容ですが、ずいぶんと書き込んだな、と。
 初期プロットでは、この7章から9章までが1つの章で終わるつもりだったのですが、じっさいに書いてみると、いろいろ描写しないといけないことがあって、予想よりも膨れ上がってしまった次第。

 まあ、初期プロットが「扉の前で見張りに立つリメルガ→扉の中の異変に気付き、戦闘態勢を整えて飛び込む→カレンに襲い掛かるラーリオスと対峙する→敗北し、カレンの亡骸を運んで脱出」というだけで、犬っころロイドも、次章でちらっと登場する氷のジルファーも書いているうちに、思いつきで生まれたキャラです。
 ロイドや、ジルファーを登場させたのは、ラーリオス、そしてリメルガの強さを明確にするため。強いキャラを示すには、「それなりに強いであろうキャラ」との対峙が必要です。「大勢のザコを倒して強さを示す」なんてのは、敵キャラの脅威を示すには良くても、主人公の関係者が行うことではないかな、と。
 本当に強いキャラなら、「名もないザコは、一にらみしただけでビビッてしまい、手が出せない」ぐらいの描写で十分。そして「そこそこ腕に自信のあるザコリーダーが、主人公の力を評価しつつ、『少しは腕に自信があるようだが、このオレにケンカを売ったのが間違いの元だ。目に物見せてやる』と言いながら、返り討ちに合う」流れ。それを見た大勢のザコたちは、「何て奴だ。〇〇さんがこうもあっさりやられるなんて。とてもかないっこねえ!」と叫んで、逃げ出す。
 要するに、ザコ戦のポイントは、ザコの中でもヒエラルキーを用意することで、強いキャラのレベルがどの程度か明示するのが目的、と言えます。そういう計算のできていない作劇は、基本ができていない、と考えます。

 で、リメルガは「ラーリオスには勝てない」という前提は崩せないのですが、「それでも強いんだ」というのをどう描くかが課題。
 そのための対比として登場させたのが、ロイド。彼の属性は、「足手まといの少年」であり、かつ「名もないザコ」。本当に、この時点で名前がありませんでした(笑)。何しろ、リメルガが「名前は聞いたが覚えていない」ってキャラですから、リメルガの視点で物語を描写するなら、当然、名前が出てこないわけです。
 ストーリーテラーとしては、リメルガ視点というのは、出したい情報がうまく出せないため、書くのが刺激的だったりもします。リメルガがひどいのは、作者が一生懸命、星輝転装の理屈を描写しても、「そんな小難しい理屈はどうでもいい」と、あっさり斬り捨ててしまうところ。リメルガの性格として、「目上の人間にも逆らう反骨的性格の持ち主」というのがありますが、実は作者にすら逆らっているんですね(笑)。

 そして、この章の大切なのは、上位に対する下位星騎士の描写に加え、この物語の中で唯一、「星輝転装」が描かれていること。ソラークやランツは、最初から甲冑をまとっていて、マスクのみ「輝面転装」したシーンはありますが、まあ全身の変身は、このシーンのみ。イメージソースとしては、「ゲキレンジャー」の黒獅子・理央さまの「臨気鎧装」ですね。
 あと、衣服がはじけ飛ぶのは「デビルマン」や「北斗の拳」ですが、変身を解いた後に裸である、というのは「響鬼」やTRPG「デモンパラサイト」という作品があるものの、「どうも描写がギャグにしかならない」「衣服を用意するバックアップ組織が欠かせず、星輝士のイメージには合わない」と考えたので、「星輝石内部に光の粒子となって保存される」という設定が加わりました。

 それと、ロイド。
 「両腕を振り回す独特のポーズ」をとる辺り、変身ヒーローオタクですね(笑)。
 まあ、こいつはNOVAの中の子供属性そのままですから。
 そして、リメルガとは「犬猿の仲」である辺り、リメルガが作者に反発するのは当然と言えるでしょう。
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