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プレ・ラーリオス

夜明けのレクイエム(4−16)


 
4ー16章 ブロウクン・ソウル

 黒いカートの瞳が、カレン(ぼく)を見つめていた。

 こいつは誰だ? 

 倒すべき敵。
 体の中から、そういう声がざわつく。
 渦巻く《闇の気》が熱を伴って、全身の細胞を活性化させる。

(カートを殺して、私も死ぬ)

 カレンの残した破滅への願望が、《闇》と一体化して、ぼくの正気を脅かす。

 いやだ。
 ぼくは死にたくない。
 そう抵抗する意志だけが、衝動的な暴走を食い止めた。
 さもなければ、再び魔獣(ビースト)と化したカレンの体が、カートに襲い掛かっていただろう。
 ぼくの心を宿したカレンが、ぼくの体を傷つけようとする皮肉。

 こちらが《闇》を抑えようとあがいている間に、体を乗っ取った相手が先に動いた。
 寝台からすっと立ち上がり、(なめ)らかな動作で後方に飛び退(すさ)る。
 自分の無骨な肉体が、これほど洗練された動きを見せるとは思わなかった。
 その動作と、鋭い視線がこちらの反応を封じ込めた。
 距離を置いたのに、巨体ゆえの威圧感がのしかかってくる。
 しかも全身から、熟練の戦士の持つ気迫や意志の力が、発散されていた。
 そして、異形の左手が高々と掲げられる。
「《闇》よ、鎮まれ」
 深い低音(バリトン)の言葉だけで、ぼくの心を脅かす破壊衝動が収まった。
 消えたのではない。
 ただ、上から抑えられ、屈服させられた。
 ぼくの意思だけでは抵抗しきれたかどうか分からない強力な《闇の気》。それをこうもあっさり抑えつけるなんて。
 畏怖と感謝の念、そして微かな羨望心が湧き上がる。
 肉体の変化も解けてようやく、ぼくの心にも余裕ができ、かすれ震えた声を漏らした。
「あ、《暗黒の王》……」
 その称号にふさわしい威厳を相手に感じたので、自然に漏れ出た一言。
 その名を自称するもう一人の存在を思い出す。
 フェイクなのか? 
 ぼくの体を奪ったのは、夢に出てきたあいつなのか? 
 黒い瞳は寝台から動けないでいるぼくを見下し、互いに観察の間をとった。
 視線にさらされるうちに、なおもカレン(ぼく)の全身に漂う《闇の気》は、怯え、どよめいていた。
 どうやってこの強力な力の主に従うか、怒りにさらされずに済むか、保身と屈従の本能がもたげてくる。
 人の理性で止めなければ、犬のように媚びた視線と態度を表明していたかもしれない。
 相手が何者であろうと、敵対することは得策ではない。むしろ、全身全霊をもって、お仕えすることこそが何にも代えがたい喜び。
 破壊衝動に代わって、そんな耐え難い服従衝動にさいなまれる。
 《闇の気》に内在するのは、力と支配の論理。
 敵と見なしたなら攻撃し、敗れたなら屈服する単純な世界。
 そこで誇りを維持したいなら、力を付けて、他者を支配するしかない。
 力なき者は、他者からの支配を甘んじて受けざるを得ないのか。
 …………。
 そういう無様な本能を何とか追い払い、震える体をおして立ち上がる。
 相手に気圧されまいと意志の力を総動員して、しっかりにらみつける。
「《暗黒の王》」
 もう一度、鋭い口調で呼びかける。
 すると、ぼくの肉体はかすかに首をかしげた仕草を見せてから、柔らかい口調で応えた。
「それは、あなたのことでしょう、カート・オリバー」

「ト、トロイメライ?」
 ようやく、自分の体に宿っている相手の正体に気付いた。
「てっきり、フェイクだとばかり……」
「私の偽者(フェイク)なんて現われたの?」
 カートの、いや、トロイメライの視線はいぶかしげだった。
「あ、いや、そうじゃなくて……」内心でホッとため息をつきながら、ぼくは早口で説明を始めた。
「とにかく、《暗黒の王》を名乗る偽者がいて、そいつが夢の中に現われたと思ったら、魔獣(ビースト)に寝込みを襲われて、何とかしのいだと思ったら、相手の正体がカレンで、いつの間にかぼくがカレンになってて、全く何が何だか訳が分からないよ」
 話しているうちに、自分でも混乱してしまった。
 こんな説明で、理解してもらえるはずが……
「分かったわ」トロイメライはそう応じた。
「ええっ?」思わず目を見開き、驚きの声をあげたぼくに対して、彼、いや彼女はすかさず付け加える。
「オリバー、あなたがどうしようもないぐらい混乱しているってことがね」
「ああ、そういうこと」さすがのトロイメライも、今夜の出来事をあっさり把握するほどの洞察力は持ち合わせていないようだ。
「ええと……」事態を分かりやすく説明しようと口を開くと、
「ワルキューレに代わってくれる?」トロイメライはあっさり言い放った。「あなたじゃ話にならないわ。すぐに代わってちょうだい」
 かすかに傷ついた視線を向けてから、体内に眠るカレンの心に呼びかけようとする。
 そこで、ハッと気付いた。
「その前に体を交換したいんですけど」おずおずと口にする。
「ほら、いくらカレンが憑依慣れしているにしても、ぼくが宿っているんじゃ、気まずいと思うんだ。できれば、このことは内密に……」
「何を去勢された宦官(キャストレイティド・ユーナック)みたいなことを言ってるのよ」
「え、それって、どういう意味?」去勢された宦官(キャストレイティド・ユーナック)なんて言葉は、ぼくの知識にはなかった。
「後で辞書でも調べなさい」トロイメライはにべもない。
「とにかく、今ので分かった。あなたはワルキューレの同意もなく、無理矢理その体を使っている。彼女が助けを求めた理由は、そういうことだったのね」
 口調以上に見下した視線が、ぼくの魂を射抜く。
「それは誤解だ。ぼくだって好んで、カレンに憑依したわけじゃない。命の危険にさらされて仕方なく……」
「事情は、ワルキューレから聞くわ。体を交換したいなら、さっさとすれば?」
「い、いや、そうしたいのはやまやまなんだけど、アストラル投射するには、ぼくの星輝石に触れないといけなくて……」
「まどろっこしい」チッと舌打ちすると、ぼくの体(トロイメライ)は不意にカレン(ぼく)に飛び掛かってきた。
 強引に抱き寄せられる。
「ちょ、ちょっと……」動揺して抵抗しようとするも、
「おとなしくなさい」太く落ち着いた響きの声が、言霊のようにカレン(ぼく)の動きを封じた。
 細められた黒い瞳がぼくの視線を引き寄せ、次第に顔が近づいてくる。
 自分(カート)の顔がトロイメライのそれとかぶり、心臓の鼓動がドキドキと波打つのを感じる。
 突然のことで心の準備もできておらず、気恥ずかしさに目を閉じる。
 何となく、その場の気分で唇を突き出して、柔らかく触れるのを待ってみたけど、押し付けられたのは互いの額だった。
 ふわっと軽い浮遊感と、心もち酩酊した気分を味わった後で、瞳を開けると、黒い瞳のカレンがぼくを見つめていた。
 大きく深呼吸し、自分の肉体の力強さと安堵感、そしてカレンの甘い体臭を同時に味わう。
 にわかに彼女の体を抱きしめたい衝動に駆られたけれども、カレン、いや、トロイメライはいち早くぼくの手の届く範囲から逃れ去った。
 前に伸ばした両腕が気まずかったので、そのまま上に掲げて、泳ぐように空気をかく。
 ついでに脚も屈伸させてから、しばし軽い体操の真似事をする。
「ああ、やっぱり自分の体はいいなあ。いろいろ、力があふれてくる感じだ」
 白々しいと思いながら口にしたセリフだったけど、言葉にすると、それが事実のように思えてくる。
 少なくとも、元の状態に戻れた安堵感には満たされていた。
「そうね」
 それに対して、返ってきた答えは、どことなく寂しげに響いた。
「失ったものは返ってこない。貴重な肉体と生命よ、大切になさい」
 言葉の意味は、問い返すまでもない。
 トロイメライは遠い昔に死に、霊体として存在し続けている。
 時に誰かの体を依り代として活動しているけれど、本来の肉体に対する想いはなおも残っているのかも。
「ああ……」気まずさを取り繕うため、何か言葉を重ねておきたかった。
「全てが返ってこないわけじゃないだろう? 取り戻せるものもある。力さえあれば、壊れたものだって修復できるんだし……」
 そう言いながら、ぼくは力を発動させた。
 魔獣(ビースト)から身を守るために組み替えた即製の槍と楯を、手元に引き寄せて、もう一度、再構成する。
「壊れた椅子だって元どおり」そう芝居っぽく披露しながら、どっしり腰を下ろす。再構成された腰掛けは危なげなく、ぼくの体重を受け止めた。
「お気楽なこと」トロイメライは苦笑をもらす。
 それでも、こっちは堂々と胸を張って答えた。
「明るく考えないと、絶望して《闇》に飲み込まれる」
 自分の体を取り戻すと、心まで大きくなったようだ。
「たとえ《暗黒の王》であったとしても、ラーリオスは光を見失ってはいけない。君が提唱する《異質の闇》は、《闇》の全てをただ肯定するわけじゃないんだろう?」
「悪い理解じゃないけど……」
「カレンや、バトーツァからも、いろいろ教えられたからね」確信をもって、そう答えた。
「さあ、こちらの準備はできた。カレンを起こして、状況の整理と行こう。ぼくもカレンに謝らないといけないし、いろいろと誤解も正さないといけない。何よりも、安心させてやりたいんだ。君は一人じゃない、ぼくは君を見捨てやしないって」
 トロイメライではなく、カレンに向き合っているつもりで、力強く口にした。
 カレンとの関係だって、きっと修復できると確信して。

 トロイメライは集中するように瞳を閉じた。
「思ったよりも、濃密な《闇》」つぶやく声が耳に届く。
「ここまで冒されると、普通の人間では、まず正気は維持できないわ。よく耐えられたものね」
「そうなのか?」首をかしげながらも、改めて、状況の危険さを理解した。
「うん、君が抑えてくれなかったら、ぼくも正気を保てなかったかもしれない」そう納得しながら、感謝の気持ちを言葉に込める。
 返事は来なかったので、それ以上、相手の集中を妨げないよう黙って待った。
 カレンが目覚めたら、どんな言葉をかけようか、あれこれ考えながら。
 やがて、トロイメライは目を開いた。
 その瞳はなおも黒いままだ。
「今のままでは、ワルキューレは起こせないわ」思いがけない言葉。
「どうしてだよ?」
「《闇》に邪魔されて、こちらの声が届かないみたい。それに、もしも目覚めても、これでは《闇》の支配に抵抗することは困難じゃないかしら」
「やっぱり、ぼくのせいかな」申し訳ない気持ちで打ち明ける。
「《暗黒の王》の力をぼくがうまく制御できないせいで、知らないうちに周囲の《闇》を活性化させてしまうのかも。どうしたらいい?」
「ワルキューレの《闇》を、少し減らす必要があるわね」
「それだったら簡単だ。手を出して。《闇》を吸いとる」
「できるの?」トロイメライの瞳に、かすかな驚きが見えた。
「ラーリオスだからね」そう答えてから、差し出された手を異形の左手で握りしめる。
 力の流れを感じると共に、血管が脈打つ。
 押し寄せる《闇》に飲み込まれないよう、圧倒的な力で押さえつけるイメージを心に思い浮かべる。
 次々と育つ雑草を刈り取る草刈り機。
 穴からぼこぼこ顔を出す土中の獣を、殴りつけるハンマー。
 そして、敵選手勢の突進を弾き返す、無敵のディフェンス・ライン。
 しばらく《闇》を受け入れ、意識を踏んばっていると、
「もういいわ」トロイメライの声が、心のイメージを中断させた。
 次いで、非情な宣告が響く。
「どうやら、手遅れだったみたい」
「何だって?」《闇》を受け止めた副作用か、視界が何となく暗い。
「ワルキューレの心は返って来ないわ。《闇》に飲み込まれて、消えてしまった……」

「何だよ、それ?」黒いカレンの瞳を見つめながら、ぼくはもう一度、同じ疑問詞を返した。
「人としてのワルキューレの心は消えた。いいえ、《闇》と一体化したと言うべきかしら」
「言っていることが良く分からないんだけど……」
「それは、あなたが分かろうとしないだけ」トロイメライの言葉は冷ややかだった。
「あなた、自分がワルキューレの中に入って、何も気付かなかったの? 彼女が反応を示さなかったことに」
「そんなはずはない。ぼくは彼女の意識に接したんだ。彼女の想いをしっかり味わい、体験を共有した。それなのに、どうして急に心が消えたりするんだ? おかしいじゃないか」
「あなたが何をしたかは分からないけど、彼女の魂はもう壊れてしまったのよ。まずは、その事実を受け止めないと」
 トロイメライの淡々とした口調が重く響く。「原因追及はそれからね。ワルキューレから聞けない以上は、あなたの知っていることに頼るしかない。あるいは《闇》そのものに意識を開くか……これは自分が狂気に飲み込まれる危険が大きいから、あまりやりたくはないのだけど」
「君自身が《闇》なんじゃないのか?」
「正しくは、《闇》だったこともある、と言うべきね」そう言いながら、トロイメライは寝台に腰を下ろす。落ち着いた仕草で、こちらの苛立った気分を和らげようとするように。
「《闇》、すなわち邪霊は個々の人格を持たない集合意識に近いわ。その意味では、獣と同じで人の理性を喪失した存在。純粋なエネルギーに近い《気》よりは、何らかの意識や志向性を持つのが《霊》。だけど《霊》にもいろいろな段階、格というものがあって、生前の意志の強さによって、人格を維持できるかどうかが決まる。壊れた魂のまま邪霊と化せば、それは妄執に満ちた化け物となる。(デュンケ)ライゼルと言えば、分かりやすいかしら」
「君も、ああいう化け物だった、というのか?」
「一人の星輝士の心に触れるまでは、ね」昔を懐かしむような口調。
「彼女の想いが、私の生前の記憶と心を蘇らせた。奇跡の代償として、彼女の心は失われたけれど。だから、今の私は彼女の肉体と遺志を受け継いで、その代わりを務めながら、自分の想いをかなえるために行動しているというわけ」
「確か……リン・マーナオと言ったか? カレンから聞いたんだけど」
「そう、知っているのね。だったら話は早いわ。今のワルキューレは、彼女と同じような状態よ。《闇》に蝕まれて、心が破壊されてしまった。《森の星輝石》の力で封じ込めていた邪霊の影響力が、どういうわけか覚醒して、魂を崩壊させるまでに追い込んだ。こうなってしまったら、私でも救えない。私たちにできることは、ただ《闇》の暴走を抑えて、無害にするだけ」
「ちょっと待ってくれよ!」ぼくは自分を抑えられずに立ち上がった。
「リンは君の心を蘇らせたんだろう? 君が何年、心を失っていたのか知らないけど、それでも帰って来れたんだ。カレンは、今日の昼間まで、ぼくと普通に話していたんだよ。だったら、まだ《闇》から引き戻すことだってできるんじゃないか? 簡単に手遅れなんて決め付けるなよ」
「無理よ。それができるなら、私だってリンの心を取り戻している」トロイメライの言葉にも抑えられない感情のよすがが聞き取れた。
「私が戻って来れたのは、おそらくシンクロシアだったから。星霊皇との絆なんかも残っていて、奇跡を起こせたのだと思う。非常に稀なケースなのよ。取り戻せるものはあるかもしれないけれど、取り戻せないものだってある。素直に現実を受け入れなさい」
 何か言い返してやりたいと思ったけど、そうするだけの材料が見つからず、ぼくは力なく腰を下ろした。
 泣きたくなるのを抑えるために、両手で顔を覆う。

 その後は心を鎮めるために、淡々と情報交換を進めた。
 トロイメライの話は簡単だった。
 カレンから支援を呼びかけられたので、当面の用事を済ませて、急いで駆けつけた。
 最初は、カレンの体に入ろうと思ったけれど、思いがけない抵抗を受けたようだ。どうやら、ぼくの心が憑依していたためらしい。
 仕方ないので、近くに空いていた体を代用することにした。それが、ぼくの体に入った事情というわけだ。
「まさか、ラーリオス様の肉体がこれほど無防備にさらされていたとは思わなかったわ。あれほど、アストラル投射をうかつに使うな、と言っていたのに……」
「だから言っただろう? 非常事態だったって」
 そこから、ぼくの説明に入った。
 細かいことは省いて、フェイクの件と、魔獣(ビースト)の件に絞る。
「本当に、その男は《暗黒の王》を名乗ったの?」
「夢で見たことを本当だと言い張るならね」ぼくは皮肉っぽく返しながらも、自分の記憶を思い起こした。
「君の知り合いじゃないのか? 確か、君といっしょに探索に出たとか言ってたぞ。ピース・オブ・ハートとか……」
「知らないわ。ピース・オブ・ハートって、砕かれた心の欠片(ピース)って意味?」
「そっちのピースか」ぼくは思わず手を打った。「てっきり平和の意味かと思っていた」
「それより気になるのは、そのフェイクって男の正体よ。顔は見なかったの?」
「頭巾に隠れていたからね」
「その男とのやりとり、映像か何かで再生できないかしら?」
「イメージだけなら、そちらに送れるかもしれない。試してみよう」
 お互いに左手を合わせ、ぼくは夢の記憶を思い起こし、トロイメライに伝わるように念じる。
「ああ、なるほど、そういうことね」その反応からは、うまく行ったようだ。
「何か分かったのか?」
「ええ」トロイメライは悪戯っぽい笑みを浮かべた。「彼の左手は、あなたと同じなのね」
「ああ、そうだ」ぼくはうなずく。「うまく真似たものだと思う」
「そして《暗黒の王》を名乗った。だったら、偽者(フェイク)と考えるより、オリバー、あなた自身と考えるのが自然じゃないかしら」
 ぼくは目をぱちくりさせた。
「どういうことだ?」
「あなたは以前、私に言ったわね。時を越えて、過去に接触したことがあるって。だったら、あなたが偽者(フェイク)と見なした相手は、本当は未来のあなたじゃないの?」
 ぼくはうめいた。
 
 魔獣(ビースト)の件を追究するのは、もっと気が重かった。
 ぼくが探ったカレンの記憶の詳細に触れるつもりにはなれず、トロイメライの質問にだけ応じる形で、遠回しな話になる。
 それでも二人の会話の中で推測できたことは、いくつもあった。
 まずは、ぼくが《暗黒の王》の力で、知らないうちにカレンの封印された《闇》を解放してしまったこと。
 そして、《闇の気》を吸収して事態を収めたつもりだったけど、カレンの中の《闇》の根源は活性化したままで、その後も絶えず増殖を続けていたろうこと。
 それに気づかないまま、結果として、ぼくが不用意な言動でカレンの心を追いつめるに至ったこと。
 トロイメライは直接言及して責めることはしなかったけれど、ぼくは事情を理解するにつれ、激しい自己嫌悪の念にさいなまれた。
「こんなはずじゃなかった」湿っぽくつぶやく声に対して、
「そうかしら」カレン、いや、トロイメライの声は乾いていた。
「《暗黒の王》として歩み続けるなら、これぐらいは想定しておかないと。前に言ったはずよ。《闇》を受け入れた者は、強い意思で自分を律しない限り、欲望に身を任せ、理性を失った獣と成り果てるって。己の人間性を捨ててしまえば、いずれ邪霊に魂を食い破られることになる。誰にでも起こり得ることなのよ」
「すると、こうなるのも想定内、君の計画どおりと言うことなのか、トロイメライ」湧き起こる激情を隠すことなく言う。
「まさか。ワルキューレのことは計画になかったわ。あなたに全て任せていたはずよ」
「そうするべきじゃなかったんだ」ぼそりとこぼす。
「ぼくは未熟だった。自分の力も制御できず、他人の不安定な心も(おもんばか)れない。王になる資格なんて……」
「だったら、ここで死ぬ?」トロイメライの言葉が、カレンの声で突き刺さる。
「あなたがそこまで弱さを見せるなら、私も愛想を尽かすわ。今、私がこの体を抜け出したら、《闇》の魔獣(ビースト)がまた、あなたに襲い掛かることになる。ワルキューレの心はどうも《暗黒の王》への憎悪に塗りつぶされてしまったみたいだから。もしも罪の意識に耐えられないのなら、ワルキューレの妄執といっしょに死んで詫びるといいわ」
 本気なのか?
 ぼくは呆然とした。

(カートを殺して、私も死ぬ)

 これがカレンの遺志だとしたら? 
 体の中で、声がざわつく。
 そう、ぼくはカレンの体から《闇》を吸いとった。
 カレンの魂が《闇》と一体化したなら、その妄執はぼくの体をも蝕んでいくのだろう。
 そして、ぼくが自分の中の《闇》に負けたなら……。

「ぼくは死ねない」そうつぶやいた。
 必死に心を奮い起こして、《闇》に飲まれそうな意識を活性化させる。
「カレンが望んだのは、カート・オリバーの死なんかじゃない。カレンが恨んだのは、自分の良心を脅かす《暗黒の王》の力なんだ。ぼくが自分の中の光を見失い、《闇》に飲み込まれるようなことは、望んでいなかった」
「それでこそ、私が見込んだラーリオス様よ」トロイメライが、いや、カレンが微笑を浮かべたように思えた。
 ぼくはうなずくと立ち上がった。「さあ、カレンの心を《闇》から取り戻すぞ」
「ちょっと、人の話を聞いてるの? それは不可能だって……」トロイメライが反論しかけたのに対して、ぼくはかぶりを振った。
「フェイクの奴がもしも未来のぼくだとしたら、ヒントをくれたんだと思う。ピース・オブ・ハートが砕かれた心の欠片(ピース)って意味だったら、それを集めて再構成すれば、カレンの心も蘇る」
「それって、ただの言葉遊びにしか聞こえないわ。人間の心は、椅子みたいな物体じゃないの。偽りの希望にすがりつくのは不毛よ」
偽り(フェイク)と思っていたら、本物だってこともある。ぼくは、そう簡単に諦めない。不可能を可能にする。それがラーリオスの信念だ。君にも知恵を貸してもらうぞ、トロイメライ」
「無謀な試みとは思うけど……落ち込んで泣き言を漏らすよりはマシね」
 トロイメライは肩をすくめて立ち上がった。「分かった、従うわ、オリバー。どうするの?」
 そこまではまだ考えていなかった。
 だからヒントを求めて、質問する。
「先に確認するよ。邪霊憑きから邪霊を追い出すことは不可能ではない。間違いないね?」
 ぼくにはそれができるし、ライゼルとの戦いの際、バトーツァの持っていた杖が確か、いかなる悪霊であっても対処できる力を秘めていた。
「それは確かにできるけど……」
「だったら、今までどうしてカレンの中から邪霊を追い出さなかったんだ? 君にはできたはずだ。それなのに、カレンを邪霊憑きのまま解放しなかった。自分の目的に利用するために。どうなんだ?」
 そう言って、トロイメライに鋭い視線を向けた。
「それも手遅れだったのよ」彼女は、ぼくの疑惑を真正面から受け止めて弁明する。
「私がワルキューレと初めて出会ったとき、彼女はすでに邪霊と長く共にい過ぎた。その状態で邪霊だけ追い出したなら、その間につちかった彼女の人生経験や記憶、人格などに障害をきたす可能性がある。だから、追い出すのではなく、邪霊の悪しき影響だけ封じ込める選択をしたわけ。彼女の心を守るためにね」
 ぼくはうなずいて、彼女の弁明を受け入れた。
「つまり、邪霊を単純にカレンから切り離していれば、それだけで心が崩壊する危険があったということだな」
 腕を組んで、思考をまとめようとした。
 《闇》と一体化したカレンの魂を切り離して、もう一度、その断片を集めて再構成する。
 言葉にすれば簡単に思えるんだけど、そうした場合の弊害も先に考えておかないと。
 要は、邪霊というものは、コンピューターのプログラムに混入したバグ、あるいは癌細胞みたいなものだろう。バグや癌細胞だけうまく駆除できればいいのだけど、プログラムの中枢や重要な臓器が冒されてしまった場合、患部を取り除くことが致命的な結果になりかねない。
 ぼくのつたないIT知識や医学知識だけでも、それだけのことは想像できた。

「もしも、カレンの心を蘇らせることができなかったら、君はどうするつもりなんだ?」
 行き詰まった思考を仕切り直すために、そう質問する。
「確実なのは、私がワルキューレの代役をすることだけど、付きっきりってわけにもいかないわね」トロイメライも、ぼくを真似たのか腕組みした。必然的にカレンの胸が強調される形になる。
「まずは、邪霊の殺戮衝動を封じ込めた上で、適当な擬似人格を構築して何とか日常を送ってもらう。それには、あなたとバトーツァの協力が必要だけど」
「擬似人格って、要するに操り人形ってことか?」ぼくの問いに、トロイメライはうなずいた。
「もちろん、親しい人間を騙し通せるだけの人格を作るのは困難よ。だから、体調を崩したと言い張って、あまり表には出さない方がいいでしょうね」
「それでは儀式ができないんじゃないか。星輝士として戦うなんて不可能だろう?」
「もちろん、そう。心を持たない傀儡(くぐつ)じゃ、星輝転装もできないでしょうし。そこは私が憑依して転装した後、相手との戦いで討ち死にしたことにすれば、うまく取り繕えるはず。それまでを乗り切ればいい」
 トロイメライのドライな言い方には我慢できなかったけれど、一つヒントを得ることはできた。

「《森の星輝石》には、カレンの魂が残っていないのか?」
 少なくとも、《炎の星輝石》にはライゼルの魂が宿っていた。
 だから(デュンケ)ライゼルと分離した(セイント)ライゼルとして、ぼくやジルファーと共闘することができたのだ。
「確認してみる?」そう言って、トロイメライは腹部を指差した。
「確認って?」
「触ってみなさい」
 恐る恐る異形じゃない方の手の指先で、白衣の上から触れてみる。
 それだけで十分だった。
 《森の星輝石》の中で(うごめ)いていたのは、《闇》の気。つまり、完全に醒魔石(アウェイカー・ストーン)と化しているのだ。
 星輝石は宿主の魂と連動している。カレンの魂が《闇》と一体化してしまった以上、星輝石も自身の光を維持できなくなったのだろう。
 ライゼルの魂を《闇》と分離するためには、彼自身の死が必要だった。
 《森の星輝石》の力を借りてカレンの魂を《闇》から解放するのは、無理そうだ。他の方法を考えなければならない。

「もう諦めはついたかしら?」トロイメライは()かすように問いかけた。
 諦めたくはなかった。
 カレンの心はどこにある? 
 どうすれば、断片を集めて再構成できる? 
「心の問題は難しいのよ。目に見えるわけでもないし……」
「いや、見える」
 トロイメライの言葉に、反射的に答えた。
 その瞬間、考えるよりも先に体が動いた。
 異形の左手に、気を込める。
 気、すなわち、想いの力。
 ぼくの想い、そして、ぼくの中のカレンの想い。
 それは破壊ではなく、創造と再生のエネルギー。
「な、何を?」戸惑うトロイメライが反応する前に、ぼくは拳を放った。
 カレンの左胸、その奥に今も脈打つ心臓に向けて、アストラルの力を解き放つ。
 辺りが闇に包まれるとともに、無数の光が飛び散った。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 暗黒空間にいるのは、黒ローブに身を包んだ二人。
 《暗黒の王》を自認するぼくと、妖精めいた黒髪の少女。
「ここは?」トロイメライが辺りを確かめ、自分で答えを出す。「そう、ワルキューレの精神世界ね」
 ぼくは黙ってうなずき、頭上を見上げる。
 そこに見えるのは無数の星々。
 次いで、視線を下に向ける。
 そこにも星々は浮かんでいた。
 暗黒空間には天も地もなく、ただ宙に浮かぶ二人と、星明かりだけが存在を示している。
「こんなところに連れてきて、何をしようと言うの?」カレンの姿ではなく、魂の記憶する本来の姿になったトロイメライが問いかける。
「カレンの心を見る。直接触れて取り戻す」
「危険だわ。まかり間違えれば、こちらが《闇》に飲み込まれるだけよ」
「トロイメライ、君は一つ、大きな勘違いをしている」
「何よ、それ?」
「君は以前、カレンが自ら《闇》を求めたと言ったよな。それは違う。《闇》を求めたのは君自身で、カレンも同じだと思い込んでいただけだ」
「それがどうしたというの?」
「いいかい? カレンは《闇》に冒されながらも、心の底では絶えず《光》を求めていたんだ。だから、今もここでは星が瞬いている」
 トロイメライは口をはさまず、ぼくの次の言葉を視線でうながした。
星に手を伸ばす(リーチ・フォー・ザ・スター)」ぼくは言葉に力を込めて、左手を掲げた。
 星の一つが引き寄せられて、落ちてくる。
 それは一枚の円盤(ディスク)となって、ぼくの手に収まった。
「これが、カレンの心、記憶の断片だ」
「星の中に人の魂を見出すなんて……」トロイメライは興味深そうに円盤(ディスク)を見つめた。「あなたは、いい占星術士になれるわ」
「そりゃどうも」芝居っぽく会釈してから、ぼくはさらに円盤を召喚した。
 彼方から次々と、ぼくたちの周りに集まってくる無数の光の円盤たち。
 暗闇一色だった世界に、円盤の放つ虹色の光沢が(いろど)りを灯す。
「きれい……」あまり感情を示さない少女の瞳が、眩惑されたように見開かれる。
「これがピース・オブ・ハート?」小さな手を差し出して、円盤の一枚に触れる。
 その様子は、500年を経た魂とは思えないぐらい無邪気に映った。年上の師匠ではなく、幼い妹を相手にするような気持ちにふと駆られる。
 ぼくも円盤を手にとった。
「あまり、欠片(ピース)って感じじゃないけどな」
 フェイク、いや未来のぼくが、どういう理由で、その単語を使ったのか分からない。
 自分で名付けるとしたら、心の円盤(ハート・ディスク)、あるいは記憶の円盤(メモリー・ディスク)がふさわしいと思った。
 ふと見ると、トロイメライは円盤の中央に開いた穴に指を入れ、くるくる回して遊んでいた。
「何をしているんだ?」さすがに慌てて止めに入る。
「あら、この穴はこうするためにあるんじゃないの? 昔、円月輪(チャクラム)っていう武器を使ったことがあって、こうやって投げたものよ」
 そう言って、トロイメライは回転させた円盤を指から投げ放つ。
 解放された一枚は、吸い込まれるように仲間たちに混じって、ぼくらの周りを衛星のように巡る。
「あまり乱暴に扱うなよな。玩具(おもちゃ)じゃないんだから。円盤(ディスク)が割れたらどうするんだ?」そして思い出させるように言う。「カレンの心なんだぞ」
「大丈夫よ。元々、壊れているんだし」その物言いはあまりに無邪気で、残酷に響いた。
「あのな、ぼくたちは壊れたものを修復しに来たんだよ。これ以上、壊してどうするんだ」
「だったら、早く直しなさいよ」トロイメライの目が悪戯っぽくひらめいた。「あなたがどうするのか、こっちは興味津々なんだから」
 ぼくは何か言い返そうとしたけれど、影の少女が言葉を続ける方が早かった。
「言っておくけど、私を頼りにしないでね。こういうものを見るのは初めてなんだし。専門家はあなたなんだから、あなたが考えないと、私もどうしていいのやら」
 ぼくだって、専門家ってわけじゃない。
 こういうことに専門家がいるとしたら……それは兄だ。
 ぼくのIT知識は、兄から聞きかじったものが中心だ。それに、学校の情報の授業で習った基礎知識と、趣味の音楽や映像関連のものが少々。
 もちろん、兄はここにいないし、他に頼れる人間といえば……ジルファーか?
 彼だったら、助けてくれるかもしれないけれど、それには《闇》のことをいろいろ打ち明けないといけないだろうし……。
「トロイメライ、《闇》の秘密を知っていて、コンピューターに詳しい人間に心当たりはないかな?」
「ZOAコーポの社員のことを言っているなら、私は管轄外よ。バハムートとは距離を置くようにしているから。有能な男だけど、有能すぎて触れたら火傷する恐れがあるから。遠回しに観察しているぐらい」
「つまり、情報収集が得意な《影》派の首領でも、探れないことがあるんだ」
「興味の問題よ。私の主な関心は、形而上、つまり神や魂であって、形而下、俗世の事象には疎くなる。近年の科学技術の発展や習俗については、触れる機会も少なかったし。関心がないわけではないけど、私も別に全知全能を誇るつもりはないのだから。分からないことは、あなたやバトーツァらに任せることにするわ」
 バトーツァは芝居のことや、舞台芸能について詳しそうだけど、この場で役立つ知識を持ってそうにはない。
 結局、自分に頼るしかないのか。

 思考がまたも行きづまったので、観察に専念する。
 周囲を飛び交う光の円盤。
 発する色は様々で、大きさもまちまちに見えて距離感覚を失わせる。
 それらを見つめるうちに、ざわついた感覚が湧き上がった。
 その感覚に導かれるように、手を伸ばす。
闇に手を伸ばす(リーチ・フォー・ザ・ダークネス)
 感覚のままに紡いだ言葉。
 手元に舞い込んだのは、他と異なる雰囲気の黒い円盤(ダスク・ディスク)
「邪霊の結晶ね」トロイメライがつぶやく。
「ああ」ぼくはうなずいた。「これを集めて、適切に処理すれば……」
 ぼくはもう一度、同じ作業を行なった。
 《闇》の円盤がもう一枚。
 これを繰り返そうかと思ったとき、
「一枚、一枚、呼んでいたらキリがないわね」トロイメライはそう言って、両手を高々と掲げた。「黒き円盤よ、女王が前に集え」
 すると、光の影に隠れていた《闇》の結晶が次々と飛来し、少女の前に積み上げられていく。
 少女の肩の高さまで積み上がった《闇》の柱に、ぼくはうめき声を上げた。
 何枚あるか数える気になれない。
「1000枚から1500枚ってところかしら」トロイメライはさらりと言った。
「どうして分かる?」
「簡単な計算よ。私の肩の高さを、円盤1枚の厚さで割ったら、大体そんなもの。もちろん、おおよその目分量なので、誤差はあると思うけど」
 数学は知っていたけど、とっさにそういう計算をしようとは思わなかった。
「さすがは錬金術の研究者だな」そう感心したように誉めてから、《闇》の塊を憎々しげににらみつける。
「これがカレンを苦しめた元ってわけだ。こいつを破壊すれば……」
「よしなさい。ワルキューレの心も壊れるわよ」トロイメライが警告する。「試しに残りの円盤も集めてみれば?」
 ぼくはうなずいて、トロイメライの真似をした。
「光の円盤よ、王の前に集え」
 ぼくの肩を越えて、さらに積みあがろうとしたので、途中で二柱に分けた。
 トロイメライは積み上がった光の柱を見て、うなずいた。
「そっちは、《闇》の2倍半ってところね。つまり、《闇》はワルキューレの心の3分の1から4分の1を占めていることになる。それだけの量を破壊されて、人が自分を維持できると思う?」
 心の量をそうやって計算できるとは思わなかったけど、目に見えるようにすれば、物理的な観測の対象になるのは必然だろう。
 確か、人は3分の1の血液を失ったとき、出血多量で死に至る、と聞いたことがある。
 心と血液を同じように考えていいのか分からないけど、たとえ《闇》に染まったとはいえ、カレンの心の円盤を単純に破壊することは避けないと。
 だったら、どうすればいい?
「《闇》の円盤を取り除いて、残ったものだけでカレンの心を再構成する」
 思いつきのままに言葉を走らせながら、思考を巡らせる。
「そして、欠けた分の心は、《闇》の円盤の復元記録(バックアップ・メモリー)を用意しておいて、そこから適時、修復するというのはどうだろう?」
「何を言っているのか分からないわ」トロイメライは首をかしげた。
 ぼくだって、よく分からない。
 昔、兄が言っていたことの断片的な受け売りでしかない。
 それでも、必死に思考を進める。
「要するに、カレンから《闇》を取り除いて、邪霊に取り付かれる以前の状態に戻すんだ」
「記憶を消すってことね」トロイメライはうなずいた。「できないことはないわ。あまり賛成したくはないけど」
「ぼくだって、そうさ。だけど、まずは《闇》から心を取り戻さないと」
「その後の復元記録(バックアップ・メモリー)って何?」
「《闇》の記憶を破壊することなく、どこかに保存する。そこから必要な分だけを取り出して、カレンの失われた記憶を取り戻させる」
「擬似人格をゼロから作るよりは、元がある分、楽そうね。それで、復元記録(バックアップ・メモリー)はどこに保存するの?」
 カレンの中に保存するわけにはいかない。
 彼女の器では容量不足で、《闇》を抑えることができないから。
 それができる肉体はただ一つ。
 ぼくは意を決して宣言した。

「カレンの《闇》は、ぼくが受け入れる」


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